Challenge

#19 エネルギーも地産地消。
地元産の天然ガスを使った岩塚製菓の米菓づくり

岩塚製菓は工場のすぐ近くで産出されたガスを使っておせんべいを焼成しています。地域のエネルギーを使うための仕組みを紹介します。

新潟県長岡市は国内最大の天然ガスの産地

日本のエネルギー自給率は11.2%(2022年)しかなく、これは他のOECD加盟国と比べて低い状態にあります。地産のエネルギーは多くが、太陽光などの再生可能エネルギーか原子力によるもの。しかし新潟県長岡市には天然ガスの大きな生産拠点があり、株式会社INPEXが1984年から天然ガスの生産を行っています。

実は、新潟県は天然ガスの国内生産量・埋蔵量が日本一。天然ガスは他の資源(石油・石炭など)に比べるとエネルギーあたりのCO2の排出量が少なく、環境に優しい資源だといえます。できるだけ人にも社会にも環境にも優しい企業でありたい……岩塚製菓が地元産の天然ガスの使用を選んだことは自然な成り行きでした。
また、天然ガスの供給は安定して行われることから、生産を安定させるためにも魅力的なエネルギーといえます。

岩の地層に眠る天然ガス

日本列島がまだ海のなかにあったころ、火山の爆発で生まれた溶岩が海水で冷やされ、固まって火山岩になりました。天然ガスは、この地層のなかに眠っています。
天然ガスは、地下4,000m〜5,000mにあるグリーンタフと呼ばれる岩の地層にあいた細かな孔のなかに溜まっています。

天然ガスが貯まるグリーンタフ貯留岩の見本

天然ガスを採掘する際には、特殊なドリルを用いて硬い岩盤を削り掘り進めます。地層の奥深くまでドリルを進めていくために、長いパイプを何本も継ぎ足していく必要があり、タワーのような「やぐら」を立てて掘削作業を行います。

エネルギーを無駄なく使う

ガス田内の天然ガス生産井は、なんと岩塚製菓の工場のすぐ側にあります。しかし地下から取り出したばかりの天然ガスには不純物が含まれており、そのまま使うことができません。そのため一度パイプを通してプラントへ運び込み、近隣の他の天然ガス生産井から採掘された天然ガスと合わせて分離・精製作業を行います。

分離工程では、さまざまな副産物が発生しますが、これらも資源として活用されます。

まず最初に分離できる副産物は、天然ガス中の重質分が液化したコンデンセートと呼ばれる原油。これも、エネルギーとして活用できるものです。精製した原油はタンクローリーでオイルターミナルへと運びます。

次に分離できるのが二酸化炭素です。これはこのまま放出すると地球温暖化ガスになってしまいますが、INPEXでは長岡炭酸株式会社と連携し、一部の二酸化炭素をドライアイスや液化炭酸ガスの製造に役立てています。

電気も作れる天然ガス

越路原プラントのなかでは、精製された天然ガスを燃料に使用した火力発電所を併設しています。この火力発電所では火力による発電だけでなく、火力発電から得られる高温の排気熱も活用し、高温・高圧の蒸気を精製。ガスタービンとスチームタービンを回して電力を生産・供給しています。

エネルギー地産地消のメリット

こうして精製された天然ガスはパイプラインを通じて、岩塚製菓の工場へと届きます。安定供給されるガスがあるからこそ、岩塚製菓は美味しいおせんべいを安定してお届けすることができるのです。

岩塚製菓の工場と株式会社INPEX越路原プラントは同じ市内にあるためガスを送るためのパイプラインは短くて済みます。一般的にガスは遠くへ送り出すときほど高い圧力をかけなくてはならないためコストがかさみますが、岩塚製菓のように地域でガスを消費することができれば、エネルギーコストの低減につながります。

地域のガスを長く安定的に使えるよう、現在株式会社INPEXでは、長岡で採掘される天然ガスと海外から輸入してくる液化天然ガスを混ぜて使用しています。そのため100%地元産の天然ガスを使っているとはいえないのですが、安定的に使い続けられるという安心感があります。

これからも、岩塚製菓は地元・長岡の資源、環境、企業とともに、皆様に喜ばれる美味しい米菓を製造していきます。