Challenge

#20 新たな農業の可能性を自然栽培米と共に考える

岩塚製菓では2017年から、JAえちご中越と有限会社ファームリンクルをはじめとした近隣農家と共同で自然栽培米づくりに取り組んでいます。自然栽培米とは、農薬や除草剤はもちろんのこと、化学肥料も一切使用しない栽培方法のことです。
一般の慣行栽培に比べ収量は1/3程度と少ないながらも、6年目まで安定した収穫ができています。「自然に負荷を与えない、自然のままで栽培したお米」は、その土地本来の持つ豊富なエネルギーを自然の力で循環させて育てるため健やかなお米を実らせます。有機栽培よりも一層難しい条件で農作物を育てることになりますが、食味は高く、自然体で優しく広がるお米本来の香りを感じることが出来ると考えています。

自然栽培米7年目の取り組み

2023年6月の田植えの様子

2017年に始まった本プロジェクト。田植えの日には、岩塚製菓の社員はもとより、地域の農業を支えているJAえちご中越の皆さんや、実際の栽培において主力となっている有限会社ファームリンクルの社員の方々が集まりました。地元のテレビ局や新聞社の方も駆けつけてくださり、さながら小さなお祭りのような雰囲気で和気あいあいと田植えがはじまりました。

天神谷には山から湧いてきたばかりの水が流れてきます

自然栽培米を植えている天神谷地区は、本社のすぐそばにあり、民間の広い田んぼが広がる上流にあります。谷という名のつく通り、周辺は山で囲まれており、そこだけが一部開けた場所となっています。生産の効率の悪いこの場所は数年にわたり打ち捨てられた場所となっていましたが、今回のプロジェクトによって再び活用されるようになりました。
田んぼは保水力があり、ため池としての役割を果たせるため、下流に安定して水の供給ができます。また大雨が降っても一時的に水を溜めておくことができるため、防災にも一役買います。
効率化を追い求めた先で失われていった里山ですが、誰かがこのような場所を守っていくことは地域全般を守ることにつながっていくのです。

未来を担う、若手の農業従事者も参加

社員の一人の丸山慶次郎さんは、「高校でも大学でも農業を学んできた。デスクワークよりも身体を動かして働く方が性に合う。日々忙しいけれど、楽しくやりがいがある。自分が作った作物を『美味しい』と言われるときが一番うれしい」と話します。
また、地元の農業の持続のために「多くの人に改めてお米の価値を知ってほしい」とも。「日本のお米の味や食感は日本独自のもの。ぜひ海外の人にもこの美味しさを届けたい」と未来へのビジョンを語ってくれました。

丁寧に稲を植えていく中村泰基さん

もう一人の若手社員、中村泰基さんは「農業は毎日違うことが起きる。想像通りにいかず、手探り状態になることもあるが、いつも『美味しいものをつくりたい』と思っている」とコメント。未来の農業の担い手からも素敵な声を聞くことができました。

地域の農業を持続可能にするために

田植えに励む岩塚製菓の社員
植えられる稲。2023年の作付分からは、天神谷で獲れた種を使うことに。

少子高齢化等の理由により、地域の農業は厳しい状況が続いています。農業を継続し、地域の経済や環境を守っていくためには、農家がきちんと収益をあげられる構造を整備していかなくてはなりません。そのためJAえちご中越では生産効率をあげるための営農指導などをしていますが、その一方で非効率の極みともいえる岩塚製菓の自然栽培の取り組みを支援しています。

その理由をJAえちご中越常務理事の難波さんは、「私たちが岩塚製菓の取り組みに共感し、支援しているのは、これが稲作の原点であるからです。田んぼの本当の姿を多くの人に認識いただくことで、稲作への認識、米への価値を今一度多くの人に知っていただければと思います」と語ります。

自然栽培米の取り組みは年々関係者を増やし、その認知度を上げています。
ただ単に究極的に美味しいお米を作り販売するというだけでなく、地元の経済や環境を守ること、また文化としての稲作の保護などにも結びついているこの取り組みを今後もぜひご注目ください。