Challenge

#38
お米づくりのこと
いよいよ9年目!天神谷の自然栽培米を収穫

岩塚製菓では、2017年よりJAえちご中越、有限会社ファームリンクルと協働し、岩塚製菓飯塚工場の近くの天神谷で自然栽培米を栽培しています。
自然栽培とは、まさしく自然のままの農法で、農薬は一切使わず・肥料も外から入れることはありません。その農法も今年で9年目となり、無事に収穫の日を迎えることができました。今回は、刈り取りの様子を紹介します。
観測史上最も暑い夏の米作り

2024年から続く「令和の米騒動」が静まりやまぬなか行われた今年の作付け。新潟県各地の農家は猛暑対策をしながらシーズンに挑みました。天神谷における自然栽培米の田植えも、JAえちご中越やファームリンクルの皆様の知見を生かし、近年の異常気象に備えるべくできる限りの対応をしました。
施策の一つが「ポット苗」の作付けです。小さなポットのなかで育てた苗を一株ずつ人の手で植えることで幼苗期の生育を早め、雑草に負けない強い稲に育てることにしました(2025年の田植えの様子はこちらからご覧いただけます)。
充分な対策は施したつもりでしたが、2025年は観測史上最も暑い夏となったことから稲の生育管理は難航しました。また長岡を含む新潟はほぼ1ヵ月雨が降らなかったため、渇水が心配されるなかでの栽培にもなりました。幸いにも、天神谷は豊富な湧き水のおかげで事なきを得ることができました。
世界に誇れる営みが、これからも続いていくように

迎えた収穫の日は10月2日。前日から朝方にかけて大雨が降ったため、無事に収穫できるかが心配されましたが、昼前にはすっきりと晴れた青空となりました。
収穫に際し、岩塚製菓の会長・槇春夫は「田んぼは日本の原風景、日本の暮らしの原点となるもの。世界に誇れる営みがこれからも続いていくよう、みんなで力を合わせて取り組んでいきたい」と挨拶。

JAえちご中越・代表理事専務の丸山健司氏は、昨今の米を取り巻く状況と今年の収穫状況について紹介し、自然栽培米の取り組みを続けていくことで農業の価値をあげていくことの重要さを語りました。
さらに実際の栽培作業を担ったファームリンクル代表の内藤章次氏には、厳しかった今年の栽培状況と生育のために行った工夫についてについてご紹介いただきました。
あえて手作業で刈り取ることで、お米への想いを育む

稲刈りは一部をコンバインで、一部を人の手で行いました。あっという間に稲を刈り取る機械の力に圧倒されつつも、それぞれが鎌を持ち、一束ずつ稲を刈り取り収穫の喜びを味わいます。
明け方まで降った雨の影響で田んぼの中はぬかるんでいましたが、一歩一歩慎重に歩を進めて収穫を行いました。


慣れない作業に社員が四苦八苦するなか、猛スピードで作業を進めたのが会長の槇です。槇は18歳で親元を離れるまで実家や親戚の農作業に従事していたため手作業での収穫にも慣れており、「懐かしい」と言いながら鎌を動かしていました。

新入社員3名も頑張りました。ぬかるみに足をとられながらも、身体のバランスを保って作業にあたります。徐々に疲労が溜まってくる足腰をなだめながら、黄金色に実った稲を刈り取りました。除草剤を使わない自然栽培には雑草が混ざるため、慣行栽培よりも稲刈りは大変な作業となりますが、米の大切さを学ぶ機会となりました。

稲刈りに参加した商品企画の川端は、集まった記者団に対し「お米が多くの自然の力を取り込んでできるすごい作物なのだとわかりました。大切に使い、美味しさを届けていきたい」とコメント。
また会長の槇は「社員がお米の大切さ、素晴らしさについて学ぶ良い機会となりました。一人ひとりに、これからも原料であるお米を大切にしてもらいたいと思います。『お米となかよし』をコーポレートメッセージに掲げる企業として、お米を美味しく加工し、ロスを減らすことに取り組んでいきたい」と述べました。

稲刈りには、岩塚製菓が自然栽培米に取り組むきっかけとなる講義を行った共立女子大学の長尾雅信准教授も参加。
「全身を使いながら夢中になって作業をすると、普段と違う刺激を受けられます。とてもユニークな経験ができました。田植えや稲刈りができる場所は少なくなっているので、今後はこのような体験をしたいという人が増えるのではないでしょうか。自然栽培米の田んぼのような環境は地域の資源になっていくかもしれません」と所感を述べてくれました。
10年目へ向けた「種づくり」

また、今年は来年の作付けに向け種となる稲も大切に育てました。優良な種を育てるため、稲はポットで育て、一束ずつ人の手で植えました。さらには田んぼにぬかや「ぼかし」と呼ばれる肥やしを投入。自然栽培米は、外部から肥料を足して入れることができないため、籾やぬかなど、稲から出る副産物を田んぼに戻し、生育の補助としたのです。その結果、種用の田んぼでは大粒の実がたくさんついた立派な稲穂が育ちました。
55アールの面積で今年の終了は660kg、等級は2級のお米を収穫することができました。厳しい環境下にある中、今年も「実り」に感謝し、大切に想いを伝えたいと考えています。来期はいよいよ自然栽培米栽培10周年。どのような発見や進化があるのでしょうか。岩塚製菓の自然栽培米への挑戦は続きます。