Challenge

#31 音更大袖振大豆の栽培は楽じゃない!?
音更町の農家さんの本音を聞きました

▲音更大袖振大豆畑で握手をする岩塚製菓の小林常務と農家の山田さん。

岩塚製菓の「大袖振豆もち」の豆は全て北海道音更町で採れた音更大袖振大豆を使用しています。甘みが強く香りがいいという特長がある音更大袖振大豆は、実は他の品種に比べ手間がかかるため、生産量も限定されています。
音更大袖振大豆を育てる苦労と喜びを生産者さんに聞きました。

株の特長から、大量生産が難しい品種

――音更大袖振大豆はJAおとふけが生産者の皆さんに直接生産のお願いをして作ってもらっているケースが多いと聞きます。音更大袖振大豆を育てる苦労を教えていただけますか。

大変なことの一つは、音更大袖振大豆は倒伏しやすい品種であることです。そのため株と株の間隔を広めに取り、植物が背くらべ競争をして背が高くなりすぎないようにしてやらねばなりません。そうすると面積あたりの収穫量がどうしても少なくなってしまうんです。
それから、音更大袖振大豆は他の品種に比べて水分量が多いことも生産者泣かせです。収穫の際、大豆の品質に影響します。

生産者の目から見ても「大袖振豆もち」は納得の美味しさ

――いつも生産にご協力いただきありがとうございます。

でも苦労するかいがあるくらい「大袖振豆もち」は美味しいですよね。実は私は芋や豆などの穀類はあまり好んで食べないのですが、商品になった大豆は大好きです。とても美味しいと感じています。お酒にもよく合うので、おつまみとして食べることもありますよ。腹持ちもいいですよね。美味しく加工してもらえることをうれしく思っています。
生産は容易ではありませんが、音更町の名を冠したブランド豆なのでこれからも頑張って生産していきたいですね。

――ご自身ではあまり大豆は召し上がらないのですね。

枝豆は食べますよ。夏の青々とした音更大袖振大豆の枝豆もすごく美味しいんです。これは市場にはほとんど出回らないので、生産者の特権ですね。

品質維持には収穫のタイミングを見極めることが大事

――音更大袖振大豆の品質を維持するために工夫していることはありますか。

収穫の時期を正しく見極めることです。音更大袖振大豆は他の品種よりも水分の含有量が多く、枯れるまでに時間がかかります。そのため収穫の時期が近づくと常に畑を見て回り「その日」を見極める必要があります。もちろん雨や朝露も収穫には悪条件です。収穫の作業は晴天が続いた日の午後を見計らって一気に行っています。

天に祈り、大地を守りながらの生産

――栽培時の工夫はありますか。

音更町の多くの農家では連作障害を避けるため、大豆のほか、ビート(砂糖大根)、馬鈴薯、小麦などを輪作しています。大豆は土に窒素を固定する力があるため、連作には向かないものの収穫後は他の作物が育ちやすくなります。多くの農家が持続可能な農業に取り組んでいますよ。

水分のコントロールについては、正直、天に委ねるしかありません。耕作地が広大なので、灌漑(=農地へ水を人工的に供給すること)による農業は非現実的なのです。2024年の夏はなかなか雨が降らずどうなることかと思いましたが、秋になり恵みの雨がたくさん降ったおかげで高品質ないい豆が育ちました。ぜひ美味しく味わっていただきたいですね。

――ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。

JAおとふけの担当者からの話

北海道の農業人口もどんどん高齢化してきているなかで、音更町の農家が半世紀を超えて育て上げた音更大袖振大豆を購入しつづけてもらえることはとてもありがたいです。現在、JAおとふけで取り扱う音更大袖振大豆は、全国で最も岩塚製菓へ納品しています。音更町の名前を関した大豆が岩塚製菓を通して全国へ広がっていくことは、地域にとってとても誇らしいことなので、これからも岩塚製菓さんには美味しい「大袖振豆もち」を作り続けてもらいたいと思います。

音更町ってどんな町?

北海道の中央よりやや東側に位置する内陸の町です。日本には珍しい内陸性気候であり、冬はマイナス20度を下回ることもあります。農業や酪農が盛んで多くの人が一次産業に従事しています。
2019年に放送されたNHK連続テレビ小説『なつぞら』の舞台になった地でもあり、町のなかにはドラマの世界を体験できる施設があります。